2003年7月25日

Elfan's Travels
by elf-Service

July 2

ガレキ

発掘作業を眺めていたツヴァイは、あまり聞き慣れない音に振り返りました。

ちょうどエルファンが、ガレキの隙間に逃げ込んだらしい小動物を、ガレキごと引き裂いたところでした。

「爪...割れないように...気をつけてね...マネキュア塗る?」

「にゃっ? これエルファンの本物の爪じゃないにゃ」

「本物...じゃない...の?...........」

試しにつっついてみます。

「みにゃっ!? ち、違うにゃぁ。本当に本物じゃないですにゃ」

それならと、ツヴァイが言いかけた時――

唐突に小動物が物凄い速さで飛び出してきました。隙をうかがっていたのです。

「にゃっ!」

タイガークローの一撃。

音にならない悲鳴を上げて、小動物が地面に投げ出されます。それっきり、ぴくりとも動きません。小さな金属片が辺りに散らばってしまいました。

「.....!」

「え、何があったの? エルファン、勝手に壊しちゃダメじゃない」

「ごめんにゃ。生き物だと思ったにゃ……」

ゴースト

瓦礫に埋もれた白骨死体を通り過ぎると、辺りは一段と暗くなりました。視界がちらちらします。灯かりが消えかかっているのです。

「しろさん、崩れたら逃げるにゃ」

「そうするみゃ?」

一行は不安を抱えたまま、寺院の最奥に向かいます。しろとエルファンを先頭に、シャンティ、ツヴァイと続き、最後尾に恐る恐る調査団がついてきます。


やがて、一行をするどい寒さが襲ったかと思うと、灯かりがフッと消えました。

ゴーストです。彼らは人間の恐怖心を煽るのが得意です。

エルファンの思った通り、最後尾にわらわらと出現するゴーストたち。

「で、出たぁぁぁっ!」

「うあぁぁぁあぁ……」

かなり近くから、やたら生々しい叫び声も上がりましたが、エルファンは聞かなかったことにしました。

「知らない魔物さん、覚悟するにゃっ!」

(Lv4 エアルーン寺院 : クリア)

July 4

対決

一人の年老いた男が姿を見せます。調査を執拗に妨害し、一行を苦しめた張本人です。

「魂を差し出す気になったか…。ククク…。」

ツヴァイは調査団をちらっと見ました。

「....いない...」

「まさか逃げたのかしら。道に迷ったら大変……捜してくるわ」

「お願いみゃ」

男はこちらを睨み付けて叫びました。

「誰も逃げられぬわ!」

「フーッ かかってくるにゃ!」

その言葉を合図に、戦いが始まりました。


ガラードの放ったダークストームに一瞬、視界を奪われます。

しろとツヴァイは構わず銃を連射します。

エルファンは飛び出しました。真っ直ぐ、祭壇に向かって。

もちろんそれを見逃すガラードではありません。二体のドリームイーブルを操り、体当たりを仕掛けます。これで猫耳は麻痺して倒れる……はずでした。

「効かないにゃ!」

耐性の指輪がうまく弾き返したようです。

「エルファンみゃん!」

「にゃっ!」

すぐさま方向転換すると、ドリームイーブルの横に回り込んだしろとタイミングを合わせます。

集中攻撃!

!!

これには耐え切れず、消し飛びました。あと、一体。

ガラードがこちらに振り向く頃、ツヴァイはもう一体のモンスターに正確無比な射撃を浴びたところでした。

「.........HIT....」

間を置かず、エルファンの爪が閃きます。

一撃、二撃。

ΞΛΛΛ!

奇怪な悲鳴を上げると、ドリームイーブルは闇に消えました。

それでも当のガラートは、余裕の表情です。彼は祭壇の側から一歩も動いていません。

彼に対する攻撃は、ほとんど当たっていないのです。当たっても、それほどダメージは無いのか、平然と構えています。

「効いていないみゃ」

「........ッ...」

「ミサイルをよけるなんて反則ですにゃ」

数を撃てば、そのうちのいくつかは命中します。しかし、既に残弾がほとんどありません。


この時を待っていたかのように、ガラートが動きました。

まっすぐ白猫を目指します。

しろは、ヴィングトールを構え直して残弾をすべて撃ち込みます。ガラートは――まだ倒れません。

数拍で間合いを詰めると、どこに隠し持っていたのか、爪をかたどった漆黒の武器で白猫を切り裂きます。

!!!

ジャケットを着用していても、これにはひとたまりもありません。

エルファンは何もできませんでした。


……

爪も使いこなせないのに……

誰かを護ろうとするから……

「さあ、お前の魂も私が貰い受けよう!」

エルファンは……

「そんなの嫌にゃ……」

にゃぁぁぁっ!

ガラートを目指します。

彼は咄嗟に飛び退こうとしましたが、間に合わないと知ると、再び武器を構えます。

一撃。

漆黒の爪が目前に迫ったエルファンを切り裂きます。しかし、猫耳を止めることはできませんでした。

猫耳の爪が二つの軌跡を描き、呪術士の身体にいくつもの光の筋を形作ります。彼は信じられないという表情で、こちらを睨み付けます。そして――

悲鳴を上げることもなく――

呪術士の身体が、ゆっくりと倒れました。

「猫耳族は……悲しい生き物ですにゃ……」

勝敗は決したのです。

白猫

街に戻った一行は、傷付いた白猫を病院に運びました。

「しろさん、へにゃ〜んとしてるけど、大丈夫にゃ?」

「無理し過ぎたのかしら……」

ガラートとの戦いで負傷し、猫はぐったりとして動きません。

病院の人は言います。

「絶対安静です。当分の間、冒険などは控えてください」

「ごろごろするのはダメかにゃ?」

「それも駄目です」



エルファンは今日も猫神様にお祈りをします。

――しろさんが良くなりますように。

キャンディとネズミのしっぽを御供え物にします。

――エルファンはいつまでも待っているにゃ。

(Lv4 エアルーン寺院(ボス) : クリア)

July 7

逃走劇

「はぁ……」

溜め息をついています。調査団の人です。

ちなみに、エルファンは何も悪くないですにゃ。

「がんばるにゃ。もう一度挑戦するにゃ」

「お前は気楽でいいよなぁ」

説明するにゃ。

道に迷った調査団の人は、ゴーストたちに追われて丸3日間も逃げ続けていたのです。命は助かったけれど、みんな怪我をしてしまったにゃ。それで一度街に戻ったのですにゃ。

「……待て。一番大事なところの説明を省いたろ、今」

「そ、そんなことないですにゃ」

すりすり。

でも冷や汗たらたらです。

エルファンたちは、怪我をしたしろさんを早く運ぶために、調査団の人よりも先に街に戻ったのです。見捨てたとか、そんなんじゃないですにゃ。たぶん。

……みんなの視線が冷たいですにゃ。

(Lv4 エアルーン寺院 : クリア)

July 9

ごろごろ

「...........喉..撫でたら...........ごろごろいう?」

「ごろごろごろ…」

……にゃはっ!?

(Lv4 エアルーン寺院 : クリア)

July 11

食べ物

「毎日食べ物をさがすのも大変ですにゃ」

「食べ物を探す…って。エルファンは毎日どうやって食事してるの?」

「……それはとても言えないですにゃ」

人間にもらっているなんて、とても言えないですにゃ。

「言いづらいなら無理には聞かないけれど。……アップルパイ、食べる?」

「言いづらいというかその…… ご飯おごってもらうことが多いですにゃ。アップルパイは食べるにゃっ!」

嘘は言ってないですにゃ。

「そうなの。言い渋るからてっきり…。それよりアップルパイ、どうぞ」

「ありがとうにゃ♪」

(Lv4 エアルーン寺院(ボス) : 引き分け)

July 25

日記は?

「しまったにゃ!」

エルファンは愕然とした。今更ながら重大な事に気付いてしまう。

「……日記を書いていなかったにゃ……まずいにゃ。このままじゃあ……」

お仕置き♪

「……はぅっ」

思わず卒倒した彼女のすぐ側に、≪浮空艇≫が音もなく着陸する。

地に降り立った――スラリとした長身で、長い黒髪の――女性が声をかけてきた。アーマー保守会社「エルフサービス」の研究グループの一人で、エルファンの直接の上司にあたる人物だ。普段は黒のサングラスを付けているが、今日は外している。

「エールファーン。日記をずぅぅぅっと書いていないみたいだけど、どうしたのかしら?」

「うにゃぁぁっ! お仕置きは嫌にゃぁぁぁっ!」

悲痛な叫び声を上げるエルファン。

「……ええと。ちょっと、あんまり痛々しいからお仕置きは勘弁してあげるけど、それより貴女にお迎えが来たの……もう知ってる?」

猫耳はやっと我に返った。

「にゃっ? 知らないですにゃ」

よく見ると、上司の乗ってきた≪浮空艇≫から、もう一人降りてくるではないか。

「にゃぅ」

エルファンは思わず鳴いた。

エンディング 「真実は遠く」

そわそわして、どうも落ち着かない。

艦内は非常に静かである。ありがちな機械音が全くないというのも、オーナーのこだわりなのだろうか。窓の外はほぼ真空だから、外から伝わってくる音もない。

エルファンはふかふかのベッドの上でごろんと横になっても、まだ地上のことが頭から離れずにいた。気分が晴れない。もやもやしたものが、ずっと引っ掛かっているのだ。

「もう離れたのかにゃ」

『本艦は惑星引力圏を既に離脱。恒星の重力を利用して加速中』

即答するコンピュータに、もう一度訊ねる。

「まだ離れたわけじゃないにゃん?」

『レーダーで確認可能な距離です』

部屋に備え付けられた窓に跳びつく。が――どこをみても暗黒の空が広がるばかりだった。

「エルファン?」

声をかけられてはっと気付いた。

振り向くと、巫女姿の女性がそこに立っていた。気配は無かったはずだが、いつから部屋にいたのだろうか。

「もう少し遊びたかったのは、エルファンのわがままかにゃ」

答えは決まっていた。

これから為すべきことも。

ただ、自分の昔の姿を重ねてみると、この猫耳の気持ちは痛いほどよくわかるのだ。

「寂しさを感じているの?」

「お別れするのは辛いにゃ。エルファンは嘘つきになったにゃ」

涙を浮かべる彼女を、巫女姿の神は抱き上げた。

「ごめんねエルファン」

「にゃぅ……」

「ん…… ちょっとだけ、体重増えたかしら」

エルファンは腕の中で暴れて抗議した。

エルファンの旅  おわり

(Lv4 エアルーン寺院 : クリア)

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Elfan's Travels / 2003年7月